下肢動静脈超音波検査

人口の高齢化や急速な食生活の欧米化に伴い、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満といった動脈硬化の危険因子によってひき起こされる生活習慣病が増加しています。
その結末として、下肢(脚)を栄養している動脈の狭窄による閉塞性動脈硬化症、心臓の筋肉を栄養としている冠動脈が狭窄・閉塞する狭心症や急性心筋梗塞、脳を栄養している血管が狭窄・閉塞する脳梗塞などの危険な状態へと進行することがあります。
この、下肢動脈の狭窄を調べるのが、下肢動脈超音波検査です。

最近話題の「エコノミークラス症候群」という病気がありますが、これは長い間同じ姿勢でいると足の静脈に血の固まりができ、体を動かしたとたん血の固まりが血管を通って心臓から肺へ行き、肺の血管に詰まってしまう「肺塞栓症」という病気を引き起こします。胸が痛くなったり呼吸が苦しくなり、最悪の場合死に至る事もある恐い病気です。
この原因である血の固まりを下肢静脈超音波検査で見つけることにより、診断・治療に役立てます。

閉塞性動脈硬化症とは

足の動脈は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給します。足の動脈が途中で細くなり(狭窄といいます)、血液が流れにくくなると、足の指まで血液が十分には流れず、酸素不足、栄養不足となります。このような状態を招く、最も多い病気が、動脈硬化によって動脈が詰まる 「閉塞性動脈硬化症」 です。

閉塞性動脈硬化症の症状

ある距離 (特に坂道) を歩くとふくらはぎに凝りや痛みを感じ、休むと痛みが改善して再び歩けるようになる症状が出てきます。この症状を『間欠性跛行』といいます。『跛行(はこう)』とは“びっこをひく”という意味です。

このような症状のある方は、是非一度、病院を受診して、下肢血管超音波検査などの精密検査を受けて頂くことをおすすめします。

病気が進行すれば、ごく短い距離でも痛みを感じるようになります。さらに病気が悪化すれば、足が冷たく、安静時でも痛みがあり、皮膚の色が悪い(紫色) 、傷が治りにくい、足の指やかかとに潰瘍ができるなど、壊疽と呼ばれる状態になってしまうからです。

検査方法

◎足にゼリーを塗り、そこにプローブ(探触子)という超音波発信器を軽く押しあてるだけです。痛みや苦痛をともなわず、何度でも検査ができます。
◎検査時間は、患者さんの病気や状態等で異なりますが、約30分から1時間程度です。
◎検査時には、下半身はズボンやスカートは脱いでいただき、下着のみ着用した状態となっていただきます。患者さんにとっては少し恥ずかしい思いをされるかもしれませんが、検査室には1人づつ患者さんにお入りいただきますので、プライバシーは損なわないようにしてあります。

検査の実際

下の写真は、「少し歩くと左足がだるくて、痛くなる。休みながらでないと50メートルも続けては歩けない」と言って来院された患者さんの下肢動脈超音波検査の写真です。
左足の血管の2箇所に狭窄があることがわかり、すぐに血管内治療を行うことをおすすめしました。
また、下の写真は、長期間寝たきり状態であった患者さんで、次第に足が腫れてきたとのことで下肢静脈超音波検査を施行したときの写真です。

外腸骨静脈~大腿深静脈にかけて血栓を認めました。
このような病気を深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVTテ゛ィーフ゛イティー)といいます。

DVTは寝たきり患者さんや脳梗塞・脳出血後の患者さんなど、何らかの原因で足を自力ではほとんど動かすことのできない患者さんによく起こります。
足を動かさないために静脈血がうっ滞することや、その他にも血液が固まりやすくなっていたり、血管が傷ついていたりすることなどが原因と考えられています。

この血栓の一部がちぎれて、血流に乗って飛んでいくと、心臓を通過して、肺の動脈に詰まることがあります。その病気を肺血栓塞栓症といいます。肺の動脈が詰まると肺の一部または全部が腐ってしまうので、呼吸困難が起こり、死に至る危険性も高いです。そうなってしまう前に早期発見・早期治療が重要です。