[統計]
肺癌による死亡数は1998年以降、胃癌を抜いて第1位となり、今後も増加傾向にあります。胸部レントゲンによる検診での早期発見が難しく、初診時に肺癌と診断される半数以上の方が手術不能例なこともあり,早期発見による治療が重要です.特に55~74歳の重喫煙者の方は,CT検診が有効な場合があります1).厚生労働省のガイドラインでも40歳以上の方は年に1回の検査が推奨されています。
[癌の死亡数]
Source:Cancer Information Service,National Cancer Center,2016,Japan
[組織、進行度]
肺癌には大きく、腺癌、扁平上皮癌、神経内分泌腫瘍,大細胞癌に分けられます。この中で神経内分泌腫瘍に分類される小細胞癌は,非常に予後が悪く、進行が早いため、治療については小細胞癌と,その他の非小細胞癌に分けて考えられます。
進行度は、腫瘍の大きさや、リンパ節転移、他の臓器や悪性の胸水などを有無により決定されます。進行度によって治療方法が異なります。
[診断方法]
胸部レントゲンで異常陰影がある場合、胸部CT検査を行います。CTで肺癌が疑われる場合、比較的サイズが大きい陰影に対して喀痰検査、気管支鏡検査にて確定診断を行います。腫瘍の大きさが2cm以下の小さな腫瘍で診断がつかない場合は、経皮的針生検(局所麻酔)、胸腔鏡下肺生検(全身麻酔)を行います。
[治療方法]
肺癌の治療方法には1.手術、2.抗癌剤、3.放射線療法があります。
1.手術
呼吸器の手術は内視鏡(胸腔鏡)による手術を標準として行っています。側胸部に設けた3~4か所の小さな切開から内視鏡と手術器具を出し入れし、モニターを見ながら行う手術です。昔ながらの開胸手術に比べて傷が小さく体への負担が軽いものと言えます。癌の大きさや場所、手術の方法によっては、開胸手術を行います。ただ、小さなサイズで早く発見できると、切除範囲は少なく、手術も楽で呼吸機能の低下も少ないです。
肺がんで手術が可能であるのは進行度Ⅰ期からⅢA期の一部までです。それ以上の進行度の場合は手術ではなく抗がん剤治療が主体となります。
2.抗癌剤(化学療法)
3期の一部、4期の場合、手術ですべての癌を切除することはできないため抗癌剤による全身治療となります。抗癌剤には、吐き気、白血球減少、脱毛など副作用があります。呼吸器内科の先生と共同で行っていきます。
3.放射線治療
3期の場合、化学療法と組み合わせて施行されます。また、4期で抗癌剤の効きにくい脳転移や骨転移による痛みを緩和するために使用されます。また、1期でも肺機能が悪くて手術ができない方に使用されます。
高齢者や自分の信念などで積極的な治療を望まない人には、対症療法といって、咳止め、痰切りを処方したり、痛みのコントロールのみを行ったりしています。
いずれの治療方法も、長所、短所があります。担当医に充分に説明してもらい、家族とも相談の上、納得のいく治療方法を選択しましょう。最近では、セカンドオピニオンといって他院の医師の説明を受けたりすることもできますので積極的に行いましょう。途中で治療を変更したり、中止したりする事も可能です。
検査は主に外来通院で行いますが、手術のみの場合は、約1週間の入院が必要です。手術後に抗癌剤治療を行う場合は、初回投与時は入院し、副作用を見ながら、以後は外来通院で行っております。希望すれば入院での化学療法も可能です。放射線治療が必要な場合は徳島大学などに紹介し、共同で治療を行っております。
[術後化学療法]
手術後、病理検査の結果から、術後化学療法を行うことがあります。
[予後]
現在日本で最も死亡数の多い癌です。
肺癌の予後は以下の通りで、Ⅰ期は81.6%とかなり良くなっており、私たちは、早期の診断と治療を心がけております。
Ⅰ期 81.6%
Ⅱ期 45.2%
Ⅲ期 22.6%
Ⅳ期 5.2%
再発や手術不可能な肺癌に対しても、積極的に治療を行っていますので、不安なことやご不明な点がありましたら、気軽に病院を受診してください。