間質性肺炎とは
肺の間質と呼ばれる肺胞(隔)壁を炎症や線維化病変の基本的な場とする疾患群です。一般に肺炎と呼ばれている疾患は細菌などの病原微生物による感染が原因であり、一方で間質性肺炎は患者さんの持って生まれた体質に起因する部分がありいわゆる肺炎とは全く別の疾患になります。間質性肺炎の原因の詳細は分かっていませんが、原因不明の一群を特発性間質性肺炎とし、比較的原因のはっきりしている間質性肺炎の一群を2次性間質性肺炎と分類することがあります(図1)。
特発性間質性肺炎(IIPs)
特発性間質性肺炎と呼ばれる一群のなかに組織分類により複数の間質性肺炎が含まれています(図2)。そのうち特発性肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎(NSIP)が代表的な疾患になります。発症経過により急性(数日~数週間)、亜急性(1~3か月)、慢性(数か月~数年)進行があり、組織分類によって薬物治療による反応の良い予後良好な疾患から薬が効きにくい疾患まであります(図3)。
特発性肺線維症(IPF)
慢性かつ進行性の経過をたどり高度の線維化が進行し予後不良な特発性間質性肺炎です。50歳以上の男性に多く乾性咳嗽と労作時呼吸困難と主な症状とします。一般に予後不良ではすがその自然経過は様々であり予測困難です。多くの患者では呼吸機能の悪化は年単位で徐々に進行しますが、進行が遅く極めて安定している患者から急速に悪化する患者まで様々です。5年生存率は、30~50%、平均生存期間2~4年ともいわれています。また急性増悪と呼ばれる数日から数週間以内に新たな陰影が出現し急速に呼吸不全が悪化する病態があります(図4)。
非特異性間質性肺炎(NSIP)
慢性から亜急性の経過をたどり比較的治療反応性の良いタイプから難治性のタイプまで様々ですが一般に特発性肺線維症より予後良好です。ただし線維化の強いタイプでは長期予後は特発性肺線維症と同様に不良な場合もあります(図5)。
診断
間質性肺炎の血液マーカーであるKL-6、SP-D、呼吸機能検査、胸部CT検査などの非侵襲的な検査をまず行います。胸部CTにて特発性肺線維症として典型的な場合は画像診断のみで確定診断可能な場合もありますが、正確な組織診断のために全身麻酔下の胸腔鏡下肺生検が必要となる場合があります。胸腔鏡下肺生検の必要性を判断するために多くの患者さんでは気管支鏡検査を受けていただいています(図6)。
治療
慢性間質性肺炎においては、早期で自覚症状などに乏しい場合では組織診断まで行わずに無治療にて胸部CT、呼吸機能検査などの非侵襲的な検査で定期的に経過観察しているケースも多くあります。進行がみられる場合は上記の検査にて臨床組織分類を行い、特発性肺線維症では抗線維化薬(ピレスパ、オフェブ)、特発性肺線維症以外の間質性肺炎(非特異性間質性肺炎、膠原病関連間質性肺炎、慢性過敏性肺炎など)では主にステロイドや免疫抑制剤で治療します。特発性肺線維症に対して上記の抗線維化薬は進行の抑制効果(年間あたりの肺活量の低下を半分程度に抑制)が報告されています。特発性肺線維症以外の慢性間質性肺炎に対する抗線維化薬の治験も行われており将来使用可能になる可能性があります。
急性発症の間質性肺炎や急性増悪においては主にステロイドや免疫抑制剤にて治療を行います。その際に感染症との鑑別が重要となることが多く、検査可能な状態の患者さんでは多くの場合、気管支鏡検査をうけていただきステロイド、免疫抑制剤での治療の適応について判断しています。