はじめに
「胸部レントゲン写真で肺に影があります。気管支鏡検査をしましょう。」と言われて、それ何?と思われる方は多いでしょう。
「胃カメラならのんだことあるけど、気管にカメラを入れるなんて苦しいんとちゃうの。」と思われますが、当院で気管支鏡を受けられた方の大半が「知らん間に終わったわ」、「思ったより楽だった」、と言われます。
ここで、恐らく見た事ないであろう(見る必要がなければ、見ないほうがいいのですが)気管支鏡というものについて説明したいと思います。
気管支鏡
これが、気管支鏡という器械です。
正確には気管支ファイバースコープといいいます。
太さは約6mmで、鉛筆より細く、柔軟性があります。 気管支鏡
目的
普通は胸部レントゲンで異常陰影が見つかった場合CT検査というものを行います。
CT検査でも病名が確定しない場合、気管支鏡検査を行います。
病名を確定しないと,その後の治療方法が決定しません。
気管支鏡検査で病変部位の観察や組織や細胞、細菌を一部採取したりして顕微鏡検査(病理診断)、細菌培養検査を行います。
その他、血痰、無気肺の精査、喀痰吸引、気管支異物の除去、早期肺癌の治療などに用いられます。
手順
(1)診察と説明
気管支鏡が必要ですと言われたら、診察(呼吸器外科)を行います。
気管支鏡検査の必要性および手順、注意点、合併症などについて説明します。
(できれば、御家族の方と一緒に聞かれたほうがいいでしょう。不明な事は積極的に質問しましょう。)
(2)ネブライザーによる局所麻酔液の吸入(霧状にした薬液を吸入する)
ネブライザーという、薬液を霧状にする器械で霧状にした薬液を吸入します。
できるだけ大きく吸い込み、気管支のすみずみまで薬液をいきわたらせましょう。
(3)ジャクソン型噴霧器による咽頭喉頭の局所麻酔
咽頭喉頭へ局所麻酔薬を噴霧します。
(ここが、一番、苦痛だとおしゃる人が多いです。
しかし、充分に麻酔が効いていると、後から行う検査がスムーズに行う事ができ、御本人も楽です。)
(4)検査台に仰向けに横たわります。
血圧計、酸素飽和度計をつけ、点滴を行います。
検査中は酸素吸入を行います。
また、検査が楽に行われるように鎮静薬を投与します。
(5)気管支鏡の挿入
口から気管支鏡を挿入します。
途中で麻酔を追加しながら行います。
当院では、前院長の六田先生が開発された、カテーテルを使った噴霧装置を用いて、施行中の麻酔を行っております。この方法の利点は、確実に麻酔が行える、局所麻酔薬を多量に使用しなくて良いなど多々あります。(以前、NHKでも放映されました。)
施行中は血圧、酸素飽和度を測定しながら行います。
(6)気管支の観察
▼声帯といって、左右のひだが閉じたり開いたりして声を出します。
正常な方の気管支の中です。
▼肺の末梢の方にいくと何本にも枝分かれして、だんだん細くなります。
▼肺癌の方の気管支です。
気管支を閉塞するように腫瘍が突出しています。
(7)検査終了後は
外来で2時間ほど安静にして頂き、特に変わりなければ帰宅して、自宅で様子をみて頂いております。
場合によっては、一晩の経過観察入院をして頂いております。
Q&A
1.入院しないとだめですか?
→原則的には外来で行っていますが、高齢者、低肺機能の方、経気管支鏡的肺生検を行う方、希望者は一泊入院で行っております。
担当医と相談してください。
2.麻酔が効かない人とかいるのですか?
→麻酔が効かない人はいませんが、ヘビースモーカーの方、気管支の炎症が強い方は効きにくい場合があります。
3.気管に異物が入ると、むせるのではないのですか?
→当然、そのまま行えば、咳き込んで気管支鏡は挿入できないので、局所麻酔薬を使用します。今まで、むせて、できなかった人はいませんので安心してください。
4.検査当日になって、体調不良の時は延期できるのですか?
→病気の種類にもよりますが、当然、体調不良の時は延期します。その時は、外科外来まで御連絡ください。
5.子供でもできるのですか?
→子供さんの場合は、全身麻酔下に行っております。
6.初めての検査でとっても恐いのですが。
→ほとんどの方が、はじめてうけられると思います。
当院では、昨年は約80例ぐらい行いましたが、気胸、出血などの気管支鏡検査の合併症で緊急入院になった方は、いませんでした。
その他、不安な事は何でも、担当医、外科外来看護師にお尋ねください。